研究課題/領域番号 |
22740321
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮下 幸長 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 研究員 (20435811)
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キーワード | サブストーム / 磁気圏 / 磁気圏尾部 / オーロラ / エネルギー解放 / 磁気リコネクション / 磁場双極子化 / 衛星多点観測 |
研究概要 |
激しいオーロラ活動を引き起こすサブストームの発生機構は、磁気圏物理学の長年の大問題である。解明への大きな鍵の一つは、サブストーム開始時に磁気圏尾部で発生する諸現象の因果関係である。これまでの私たちの研究により、一磁気圏尾部におけるサブストーム開始時のエネルギー解放は、磁気リコネクション領域と磁場双極子化開始領域の中間領域で顕著であることが明らかになった。一方、磁場双極子化開始領域では、エネルギーは増加することがわかった。中間領域でのエネルギー解放はこれまで注目されていなかったが、解放された多量のエネルギーのその後の輸送・消費、および、サブストーム開始に対する役割は、サブストーム発生機構の解明にとって重要な鍵であると思われる。 本年度は、昨年度に引き続き、サブストーム開始に伴って解放されたエネルギーのその後の形態・輸送について、Geotail衛星のデータを用いた統計解析と、5機のTHEMIS衛星とGeotail衛星による多点同時観測データを用いた事例解析を行った。その結果、波動により中間領域から磁場双極子化開始領域に運ばれるエネルギーは、高速流が運ぶエネルギーの数10%程度であることがわかった。 また、エネルギー解放過程、および、磁気リコネクションと磁場双極子化との因果関係をより深く検討するために、各過程がプラズマシートのどのような構造の中で発生するかについても調べた。その結果、中間領域は、磁場・イオン圧の勾配があまりなく、電子圧の勾配はある領域であり、磁気リコネクションは、その領域の尾部側の端付近で発生する。一方、磁場双極子化は、磁場・イオン圧・電子圧の勾配がある領域で開始することがわかった。今回とこれまでの結果をもとに、高速流の振る舞いや磁場双極子化領域の拡大について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブストーム開始に伴って解放されたエネルギーのその後の形態・輸送を明らかにすることは、本研究の目的の一つであるが、大きい空間スケールの観点からは、当初の計画通り、目的を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究により、磁気リコネクションにより発生した地球方向の高速流は、解放されたエネルギーの一部しか輸送してないことが明らかになったが、磁場双極子化開始にどのような影響を与えるかについては未だ不明な点が多い。そのため、今後、本研究では、引き続き、中間領域における物理過程の詳細を調べるとともに、磁場双極子化領域から中間領域にかけて見られる低周波波動と高速流の振る舞いや対応関係についても調べ、磁気リコネクションと磁場双極子化の因果関係を考察する。ここでは、THEMIS・Cluster・Geotail衛星による多点同時観測データを解析する。また、磁気圏現象の反映であるオーロラや地磁気変化の地上多点観測も合わせて解析する。
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