研究課題/領域番号 |
22740324
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
成行 泰裕 高知工業高等専門学校, 電気情報工学科, 助教 (50510294)
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キーワード | 太陽風・惑星間空間 / プラズマ波動 / 宇宙プラズマ |
研究概要 |
太陽風MHD波動による非平衡プラズマの生成過程の体系的な理解を目的として、本年度は昨年度までに得られた結果に基づいて理論モデルの構築および大域的数値計算コードの開発を進めた。理論面においては、本年度は特にプラズマと共鳴を起こさない低周波の磁気流体波による非平衡プラズマの生成過程の理解において大きな進展があった。公表済みの結果の概要を述べると、(1)磁気流体波のVlasov系における厳密解(Sonnerup-Su解)が低周波極限において非共鳴な磁気流体乱流による加熱の式を与えること、(2)温度異方性を伴う形に拡張したSonnerup-Su解が速度空間上で見られる「見かけの温度」に対応した非対称な構造を再現すること、(3)Sonnerup-Su解が速度空間上の最大エントロピー分布として与えられ、かつ磁気流体波解自体が磁気流体系の緩和状態として得られること、を明らかにした。これらの結果は、太陽風中の非平衡プラズマの一部は磁気流体波が一種の緩和状態として存在することに付随した一種の「平衡な」状態であるということを示している。このことは、「本当の」非平衡なプラズマの生成過程を解明する上での重要な前提となるものであり、運動論的MHDモデル(Vlasov-MHDモデル)と運動論モデルの結果を比較する上でも重要な知見である。数値計算コードの開発においては、Vlasov系をより高精度で解く手法を開発し、結果を論文で公表した。また、有限ラーマ半径効果の導入およびVlasov-MHDモデルの球座標化を現在までにほぼ完了しており、細部のチェックが済み次第MHD系を用いた数値計算との比較を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「見かけの温度」に関する重要な議論を先に片づけるために理論面の検討の優先順位を上げ、理論解析・数値計算スキームの構築が本年度でほぼ完了した。最終年度は大域的数値計算の実行及び小スケール波動のパラメータ化に注力することになるため、研究全体の進捗は順調であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である24年度は、過去のMHDモデルを用いて行われた数値解析結果とVlasov-MHDモデルを用いた数値解析結果の比較を行い、非平衡プラズマ生成における「グローバルな」素過程の重要性を吟味する。並行して、局所数値計算で明らかになった斜め伝搬の小スケール波動の励起・減衰過程をパラメータ化の議論を進める。
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