研究概要 |
磁気圏プラズマ研究において,中間エネルギー荷電粒子(10-200keV/q)の観測はエネルギー輸送の観点から非常に重要である.ところが過去の探査では技術的困難のため,このエネルギー帯の詳細な観測は少ない.この点に着目した申請者はこれまで,新たな粒子計測の要素技術開発に取り組んできた.本研究では申請者が培ってきた要素技術を活かし,衛星搭載可能な中間エネルギーイオン分析器を試作する.各要素技術を統合した実証試験は,近い将来の放射線帯探査(ERG衛星計画)に向けた急務であり,磁気圏尾部探査(SCOPE計画)や外惑星探査(EJSM/JMO衛星計画など)のためにも必要な布石である. 本研究では,2年間で中間エネルギーイオン分析器のERG衛星搭載モデルを製作・試験できるよう作業を進めている.その一年目である22年度は,静電分析器と質量分析器,及び半導体検出器の詳細設計を行った.特に質量分析器の性能向上のため,新たに3次元(非軸対称)構造を取り入れた.そして,数値シミュレーションにより質量分析器における信号・雑音比を一桁程度向上させる設計を得た.これらの作業は当初の計画通りのスケジュールで進行している.さらに,上記の結果に基づき,質量分析器の製作を前倒しして開始した.静電分析器の製作は他の財源で賄うこととしており,2年目で静電分析器・質量分析器を組み合せた総合試験を行う目処が立った.なお,質量分析器の設計過程では独自の3次元電位・粒子軌道計算コードも開発した.このようなシミュレーションコード及び信号・雑音比向上のためのアイデアは今後のプラズマ計測器開発にも応用できる.
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