研究概要 |
先カンブリア紀の環境のアナログとして,炭酸土類塩泉から沈殿するトラバーチン(炭酸塩堆積物・鉄質沈殿物)に焦点を当て研究を進めている.本年度は,ケーススタディーの1つとして,テクトニックセッティングが日本と類似したインドネシア・ジャワ島の温泉成炭酸塩堆積物の調査を行った.本調査地では,源泉から約200mにわたり流路に沿って大規模に堆積物が発達している.現在,水質・堆積組織および微生物との関連性を明らかにするため,分析を進めている.炭酸塩堆積物は先カンブリア紀のストロマトライトの組織と類似しており,ストロマトライトの形成プロセスの手がかりが得られると期待できる.また,秋田県奥奥八九郎温泉では鉄質沈殿物における微小電極分析を行った.予察的ではあるが,微小電極プロファイルにおいて微生物が存在する堆積物表面での変化が見られ,シアノバクテリアと鉄酸化細菌の代謝が影響していることが推測される,温泉場での微小電極分析の成功例は少なく,来年度は測定方法を改善して再度試行する予定である.さらに,水-微生物-堆積物の関連性を示すため,鹿児島県霧島市の硫黄谷温泉に発達する硫黄芝を調査した.これは硫酸塩泉に区分される泉質を持ち,湯元のpHは中性を示すが,下流に向かい低下する.それは,硫黄酸化細菌の代謝により生成された硫酸イオンが下流に向かい上昇するためであることが明らかになった. 研究成果としては,日本国内の炭酸泉の泉質をまとめた論文(Takashima et al., 2010)とアメリカユタ州の炭酸間歇泉に発達する縞状堆積物の成因にかんする論文(Takashima et al., 2011)を公表するに至った。
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