研究課題
本年度は、昨年度に引き続き、サンゴポリプモデルの開発を行った。これは、トランス石灰化モデルをベースとしたモデルで、サンゴの光合成や呼吸、石灰化、イオンポンプによる能動輸送などの素過程を定式化することで構成されている。このモデルの性能を確かめるための数値シミュレーションによる検証を行った結果、光合成や呼吸、石灰化の日周変動が良く再現された。サンゴの石灰化は“light-enhanced calcification”と呼ばれる現象が知られているが、そのメカニズムはよく分かっていなかった。しかし、本モデルによって“light-enhanced calcification”のメカニズムに対して、一つの有力な説を提唱することが出来た。また、このモデルは、サンゴの代謝の流速依存性や、物質供給が制限された場合の影響、海水のpHの影響などにも実測に近い計算結果が得られた。このモデルによる十分な性能が確認されたことを受けて、次にサンゴ骨格に記録される炭素同位体比のvital effectの実態を解明するための、炭素安定同位体モジュールを組み込んだモデルの開発を進めた。Vital effect の効果は主にCO2が生体膜を透過する際に生ずる同位体分別効果とそのCO2が水和もしくは水酸化する際の反応速度論的同位体効果が主であるとする説と、サンゴの呼吸によって生じた軽いCO2を主に石灰化に使用しているためという二つの説が主流であるが、炭素同位体モジュールを組み込んだ本モデルによる計算では、後者の説を支持した。さらにモデルのシミュレーションの結果、サンゴ骨格記録に似た年周変動が再現された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Coral Reefs
巻: 未定 ページ: 未定
10.1007/s00338-013-1032-2
JAMSTEC Report of Research and Development
巻: 16 ページ: 31-39
Journal of Structural Biology
巻: 180 ページ: 47-56
DOI:10.1016/j.jsb.2012.05.017