研究概要 |
本研究では,貝類化石の古生物学的・地球化学的解析から,中期中新世温暖期における西太平洋低-高緯度沿岸域の古水温変動と貝類化石相の比較を行い,海洋古気候と海洋古生物地理区の再評価を行うことを目的としている. 本年度はインドネシア・ジャワ島で野外調査を行い,試料採取を行った.その結果,従来ビカリアが報告されている西ジャワのボジョマニック層からフネガイ科二枚貝のAnadara(Hataiarca)亜属が産出することを初めて確認した.本亜属は日本の中期中新世温暖期ではビカリアに伴って多産する干潟群集の重要な要素であるが,これまで東南アジアのビカリアを含む層準からは確実な産出記録がなかったものである.ボジョマニック層の年代についても浮遊性有孔虫化石の検討から中期中新世に限定できることが初めて明らかとなった.ただし,ボジョマニック層の貝類化石は多産せず,保存状態も不良であることから,貝類相の比較ができる試料を得るには至らなかった.前年度,調査したネグロス島のビカリアを含む層準の年代が石灰質ナノ化石により中期中新世である可能性が高いことが明らかとなった. 化石二枚貝殻による古水温推定の研究では,東北日本(門ノ沢層)産カガミガイ類の酸素・炭素同位対比分析を開始したものの,サンプリング装置の故障などの理由によりデータを出すことが出来なかった.これについては今後作業を進める予定である.日本の中新世貝類化石群の変遷の概要について日本古生物学会で発表した.フィリピン・インドネシアでの研究成果については今後,発表・論文化を進める予定である.
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