研究概要 |
1.CTスキャン画像データを用いた、石灰岩薄片中の大型有孔虫断面の同定システムの開発 薄片下の大型有孔虫化石の断面と現世大型有孔虫標本のCT画像の任意断面との類似性を確率的に求めるソフトウェアの開発を(有)ホワイトラビットの協力により試みた。その結果、「CT画像データから大型有孔虫の任意断面画像を作成する」ことは成功した。そして、「作成した断面画像から特徴を抽出し、種の同定・区分基準を決定する」ことにもある程度成功した。しかし、「画像の条件が良くない薄片画像から同様に特徴を抽出する」ことはできなかった。このため、CT画像の任意断面と薄片画像とのマッチング技術を確立させることはできていない。今後も継続して検討する。 2.GBR海域における大型有孔虫による古水深の高精度推定方法の確立 今年度はサンゴ礁海域の表層堆積物に含まれる大型有孔虫遺骸個体の水深分布を明らかにし、古水深指標としての提案と適用方法を国際誌に発表した。グレートバリアリーフ海域に特化した古水深指標については、今後も継続して検討する。 3.IODP航海で採取された試料の分析 6月下旬から7月中旬までの3週間、ドイツのブレーメンにて行われたOnshore Science Partyに参加し、掘削コアの記載と試料の採取を行った。特に研究代表者は有孔虫分析を担当し、コアの有孔虫化石の産出状況や層位変化の概要を明らかにした。また、半固結の砂質堆積物を中心に合計約500試料を入手することができた。8月以降、試料の分析を開始した。コア写真との比較により現地性堆積物かどうかを確認し、その後各試料の粒度分析と大型有孔虫化石の抽出を行い、群集解析を行った。その結果、2.0-0.5mm径の堆積物では27分類群の有孔虫が同定された.群集組成に基づく多変量解析の結果,互いに漸移する4つのグループ(A・B・C・D群)が認められた。これらの4群は水深や底質の違いを反映すると考えられる。また、これらの4群の層位分布を検討した結果、最終氷期付近の海水準変動を明らかにできる可能性が高まった。
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