研究課題
2010年4月から5月にかけて淡青丸航海に参加し、日本海隠岐堆水深915mにおいて底生有孔虫および微生物群集の活性を調べるための船上培養実験を行った。これは、2009年に同海域で行った現場培養実験の結果を踏まえ、深海底における炭素固定に栄養塩の影響がどの程度あるのかを検証するためであった。日本海の漸深海底は、日本海固有水の存在により酸化的な環境が広がっており、酸化的な環境における有孔虫の呼吸様式や活性を調べるための良いモデルケースとなる。実験の結果、栄養塩の添加により、海底での炭素固定が4倍程度促進されることが明らかになった。今後、これらの固定された炭素の有孔虫への流れを解明し、酸化的海洋における有孔虫のエネルギー生態を解明する。貧酸素から還元的な環境に移行する堆積物中において、有孔虫の代謝がどのように変化するかを明らかにするために、2011年1月に相模湾深海底における現場培養実験を行った。この実験では、還元系発色試薬を用い、酸素濃度や硝酸塩濃度に応じた底生有孔虫のすみ分けに、有孔虫の呼吸活性がどの程度影響しているのかを明らかにすることを目的とした。異なる有孔虫種の比較を行うこと、また、同一種でも異なる溶存酸素濃度、硝酸塩濃度の環境に生息する個体の比較を行うことで、化学環境に応じて有孔虫がどのようにその呼吸活性を変化させ、エネルギーを得ているのかを明らかにできる。実験では、3日間の培養を行い、その際には、培養期間中に環境の変化を最小限に抑えるために新たに開発した現場培養装置を使用した。実験は成功し、現在試料の処理と解析を進行中である。
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Nature Geoscience
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