研究課題
2010年においては、二つのトピックスについて研究を行った。第一は、深部マントルにおけるHとCの移動と分離メカニズムの研究である。第二は、川井式マルチアンビルの温度圧力発生についてである。CとHは、含水ケイ酸塩の脱水に伴う深発地震、島弧のマグマ作用などの沈み込みに関連した諸過程、キンバライトマグマ、ランプロアイトマグマ、マントル交代作用とダイヤモンド成因などに関連するマントルの上昇流に重要な役割を果たしている。マントルにおけるCとHの平均存在度は100ppm.wtを超えないが、ローカルにはこれらの元素が濃集している。私は2010年度においては、マントル中の微量のH2OとCO2の分離と輸送を説明するモデルの構築を開始した。マントル条件では、水や炭酸塩流体はケイ酸塩のよい溶媒となる。したがって、マントルにおける流体の移動は、溶解と析出を通して進行する。このプロセスの駆動力は流体中でのケイ酸塩の濃度勾配である。このような溶質の濃度勾配は、圧力勾配・温度勾配、安定相および準安定相の違い、応力などによる。H2O流体、H2O-CO2流体中の24GPaおよび1500oC、MgSiO3の拡散係数、17.5GPa、1700oCにおけるMg2SiO4の拡散係数はそれぞれ2×10^<-7>,5×10^<-9>,および2×10^<-9>m^2/sとなった。測定には川井型マルチアンビルを用いた。実験方法は、温度勾配のもとでの単結晶合成に用いたものと同じものである。第二のトピックは川井マルチアンビルによる温度圧力発生に関してである。揮発性物質(H,C,N,S)の存在下での酸素分圧を制御したマントルの相関係は、現在の先端的な研究課題の一つである。しかしながらこれらの研究には大きな試料容積が必要なために、2-6GPaの浅部マントルに相当する圧力で行われているにすぎない。より高い圧力を大容積に発生するには、最適な条件を見出すことが重要である。そのために、これまでの川井式マルチアンビルの実験条件をまとめて、最適な圧力条件を見出す試みを行った。その結果は、PEPI誌に投稿・審査中となっている。
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