研究概要 |
本研究の目的 近年,堆積岩中の硫化鉱物・硫酸塩鉱物に,硫黄同位体の異常組成が見いだされてきている.しかし,非平衡時における同位体効果には不明な点が多い.本研究では,^<33>Sと^<36>Sの異常組成を持つ化合物が生物を介した反応と無機反応のいずれによって生成したか判別できるのかを検証する. 23年度の研究成果 ^<33>Sと^<36>Sを含む全ての硫黄の同位体効果に関して,本研究費によって購入したコンピューターおよびソフトウェアを使用し,硫化水棄ガスと鉄酸化物表面の吸着反応によって同位体効果が起きるかどうかを検証した.その結果,硫化水素ガスと鉄酸化物の表面に吸着し平衡に達しているとき,質量依存則を大きく逸脱する特異な同位体効果が起き得る事が明らかになった.これは,以前Lasaga et al.(2007,Earth Planet.Sci.Lett.)で行われた二酸化硫黄ガスと有機物表面での同位体効果の理論計算と同様の結果であり,今回の計算結果は様々なガス(もしくは溶存種)-固体表面の反応が質量依存性に従わない特異な同位体効果を起こし得る事が明らかになった. また,これらの理論計算の結果を実験的に検証するために,東北大学のオートクレーブおよびピストンシリンダーに本研究費により改良を加え,高温高圧実験を行った,ピストンシリンダーは一般にマグマ生成などの比較的高圧での環境を模擬するために用いられるが,続成作用(100-400MPa)を模擬したより低圧での実験を行うために新たな圧力キャリブレーション法を用いた.実験の結果,鉄酸化物と硫酸ナトリウムを混合し,高温高圧にする事によって鉄硫化物が生成する事を明らかにした.今後,これらの生成物の同位体比を測定する事によって同位体効果について検討することができる.
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