研究課題/領域番号 |
22740343
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石橋 秀巳 東京大学, 地震研究所, 特任研究員 (70456854)
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キーワード | マグマ / レオロジー / 結晶作用 / 粘性率 / 伊豆大島火山 / 桜島火山 / 非ニュートン流体 / 岩石組織 |
研究概要 |
本年度は3ヵ年の研究期間の2年目として、初年度の研究成果の公表を行うとともに、交付申請書に記載した計画に従って、「マグマのテクスチャー発達に及ぼす熱史の影響」に関する実験および「マグマの流動によるテクスチャー発達」に関する実験を行った。 初年度に行った「伊豆大島1778年熔岩の高温粘性率測定実験」については、本年度に実験試料のテクスチャー解析を行い、流動則と結晶組織の関係の検討を検討し、斜長石結晶を含む玄武岩質熔岩の流動則モデルを構築した。このモデルは、伊豆大島および類似の火山から噴出する玄武岩質熔岩のダイナミクスの予測に有用である。この結果は、国内および国際学会において発表し、また、国際論文誌に投稿準備中である。 「マグマのテクスチャー発達に及ぼす熱史の影響」については、ハワイ大学地質学・地球物理学科の実験装置を使用して系統的に実験を行った。その結果、マグマの経験した熱史に依存して、テクスチャーの発達過程が著しく変化することが明らかとなった。現在、実験試料の記載・分析・解析を行っている。 「マグマの流動によるテクスチャー発達」については、東京大学地震研究所の高温一軸変形試験機を使用して、実験手法の開発および天然の高結晶量溶岩試料(桜島火山昭和熔岩、北海道白滝の黒曜岩熔岩、香川県五色台のサヌカイト熔岩など)の流動変形実験を行った。その成果として、桜島昭和熔岩については、天然での噴火条件下における流動則のモデル構築に成功した。このモデルは、桜島火山に類する安山岩熔岩のダイナミクスの推定に有用である。また、サヌカイト熔岩の実験から、天然の熔岩の流動の痕跡として解釈される"流離構造"を、わずかな圧縮変形での再現に成功した。これは、天然の熔岩の構造地質学的解釈を大きく変える可能性のある結果といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の実験手法を変更し、新しい実験手法の立ち上げから行ったために研究が軌道に乗るまで時間がかかったが、結果として興味深いデータが得られたので、「研究の目的」の達成度としては順調であったと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、熱的条件・変形条件を変数とした高温実験を系統的に行ったので、今後の方策として、これらの実験試料の微細組織解析と局所化学分析を行い、熱的条件や変形条件がマグマの化学組成や結晶作用・微細組織形成に及ぼす影響について定量的に整理していく予定である。
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