研究課題
本研究では、マグマの粘性率に及ぼす浮遊結晶の影響を定量的に検討するために、結晶を含むマグマの高温粘性率測定実験および変形組織解析を行った。本研究で特に注目した結晶は、日本のような島弧地域のマグマに多く含まれ、その形状が異方的な斜長石で、実験試料としては、有史時代に噴火を繰り返している伊豆大島および桜島の両火山の噴出物を用いた。伊豆大島1778年噴火溶岩については、1300-1150℃の高温かつ結晶量が35vol.%以下と少ない条件で実験を行い、マグマ中の斜長石浮遊結晶の影響を明らかにするとともに、伊豆大島の溶岩に代表されるソレアイト質玄武岩マグマの粘性式の提案に至った。一方、結晶量が50vol.%をこえる条件での影響を明らかにするために、1050-800℃の温度領域において桜島昭和噴火溶岩の変形実験を行った。その結果、同溶岩の粘性率を、温度と歪み速度の関数として定式化することに成功するとともに、現在提案されている高結晶量マグマの粘性式の考え方を根本的に改める必要があることがわかった。ところで、天然のマグマは噴火の際、冷却による結晶作用を進行しながら流動する。このことは、マグマの流動過程でその粘性率が継続的に変化することを意味している。この影響をマグマの粘性率モデルに組み込むためには、冷却に伴うマグマの岩石組織の時系列発達過程を定量的に理解する必要がある。そこで、富士山のマグマに類似する化学組成を有する玄武岩質溶岩(ワイアナエ火山高アルミナ玄武岩)を材料とし、0.1℃/分~10℃/分の冷却速度範囲で結晶作用実験を行い、冷却速度と冷却時間を変数とした岩石組織変化を検討した。その結果、冷却速度に依存して、結晶量・鉱物種の組み合わせ・結晶の数や大きさ・形状などが変化することがわかった。この結果は、マグマの運動を考える上での、結晶作用カイネティクスの本質的重要性を示唆している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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