1、研究成果の具体的内容 圧力15 GPa、温度1700K、歪速度3×10^(-5)S^(-1)におけるDIA型変形実験装置を用いた高温高圧変形実験および放射光X線を用いた試料の応力・歪の時分割測定に成功し、マントル遷移層上部の主要構成鉱物であるウォズリアイトのクリープ強度(粘性率)の精密測定を可能にした。この実験・測定を実現するために、第三世代放射光施設SPring-8・BL04B1ビームライン設置の高圧発生装置にDIA型変形実験ガイドブロックを導入し、試料の応力・圧力を測定するためのイメージングプレート型回折単色X線検出器の立ち上げを行った。また高圧発生のためのアンビルに放射光X線を透過するキュービックBN製のものを一部採用し、放射光X線を透過するように高温高圧変形実験セルを改良した。本研究成果は、国際学術論文雑誌に投稿し現在改訂中である。 2、研究成果の意義・重要性 本年度の研究により、本研究と同様の装置を用いた放射光変形実験の高温下での最高発生圧力を10GPaから15 GPaまで更新した。本年度の研究成果には、この発生圧力の更新によりマントル遷移層上部の温度圧力条件においてマントル鉱物のクリープ強度(粘性率)の精密な測定を可能にしたという意義がある。今後継続して研究を行うことによりウォズリアイトの流動則を確立し、マントル遷移層上部の粘性率に制約を与えることが期待できる。これは地震学的に観測されている410km不連続面において、マントルの粘性率が不連続に変化するかどうかについて解明し、マントルの粘性率が地球深部ダイナミクス・地球進化へどのような影響を与えているのかを明らかにしていく上で重要である。
|