含水鉱物は沈み込む海洋プレート中に存在し水を地球深部へもたらすキャリアーの役割を果たすため、その高圧下におけるふるまいを明らかにすることは地球深部科学の重要課題のうちのひとつである。歪んだルチル構造をとる含水鉱物(δ-AlOOH)では10GPaにおいて圧縮挙動の変化が発見され、これが水素結合の対称化により引き起こされていると第一原理計算により指摘されている。 本研究では対称化に至るまでの相転移機構と圧縮挙動変化との関連を明らかにするために、本研究では相転移が起きると考えられる近傍の圧力で単結晶X線回折実験を実施した。実験はPFのBL-10Aにて行った。消滅側に対応した回折線の強度をモニタリングした結果、7GPa付近でこれらの積分強度がなくなり、この圧力で相転移が生じたと考えられる。 また、高圧下における中性子散乱実験にむけて必要な、高圧発生装置やセル開発にあたった。放射光を用いた予備実験によりパリーエジンバラプレスでは14.4GPaの圧力発生を確認した。また中性子散乱実験の2段目アンビルとして有望なSiCバインダーの焼結ダイアモンドについて30GPaの圧力発生を確認し、アンビルとしての強度が十分であることが示された。
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