含水鉱物は沈み込む海洋プレート中に存在し水を地球深部へもたらすキャリアーの役割を果たすため、その高圧下におけるふるまいを明らかにすることは地球深部科学の重要課題のうちのひとつである。歪んだルチル構造をとる含水鉱物(δ-AlOOH)では10GPaにおいて圧縮挙動の変化が発見され、これが水素結合の対称化により引き起こされていると第一原理計算により指摘されている。 本研究では対称化に至るまでの相転移機構と圧縮挙動変化との関連を明らかにするために、類似する構造をとる水酸化物群について圧縮実験を行い、常圧における水素結合距離と圧縮挙動変化の起きる圧力との間に相関があることを明らかにした。また特にその中でも非常に強い水素結合を有するβ-CrOOHおよびβ-CrOODでは同位体の違いにより軸比の圧力応答に差があることが発見された。以前の中性子散乱実験の結果では、β-CrOOHとβ-CrOOD、ともに水素がディスオーダーした構造である可能性が高いと報告されている。しかし今回の実験により両者で圧縮挙動が異なることが明らかになり、常圧下における水素結合の状態に違いがある可能性が示唆され、今後この原因について中性子散乱実験による解明が進むことが期待される。
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