研究概要 |
昨年度行われた南鳥島周辺海域の調査航海で発見された若い火山から得られた溶岩の分析と、潜航調査のデータの解析を進めた。本海域は1億~1億6千万年前の火山体しか存在し得ない古い地質の場所であると考えられていた。しかもデータはいままで知られていなかった深海底の溶岩形態を示しており、マグマ中の異常に高濃度な揮発成分量を予想させる。この事実は、マグマ源であるアセノスフェアの特異な化学組成を示唆する。しかし、溶岩の放射年代値が未だ明らかにならなかったため、火山の発生機構は詳細な議論は出来る段階にないが、Ar-Ar年代測定の為の岩石試料の照射や、U-Pbおよびフィッショントラック年代測定のための鉱物分離を現在進めており、急ぎ結果を出す予定である。これら結果は、地球科学における未知の地学現象として、成果公表していく予定である。更に、陸上に露出する過去の同火山の調査として、静岡県瀬戸川帯の調査も秋に行い、試料の採取と溶岩の分布状況を記録した。現在、深海底の実際のプチスポット火山と比較するために化学分析および年代測定を進めている。 これら成果は、途中経過ではあるが、本年度は国内学会(日本地球惑星科学連合2011年大会、および日本地質学会第118年学術大会・日本鉱物科学会2011年年会合同学術大会)において発表し、国際シンポジウム(Japanese-Russian workshop symposium, Northern Pacific-Rim Ophiolites and their Ocean-Floor Analogues)でも発表した。また、プチスポット火山に関する総説をGeochemical Journalに、瀬戸川-嶺岡帯に関する論説をGeological Sciety of America, Special Paperの特集号にそれぞれ公表した。そのほか解説記事を2件投稿した。
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