研究概要 |
本研究の目的は,小惑星に元素再分配をもたらした流体プロセスを明らかにすることである.小惑星を構成すると考えられるコンドライトは異なる起源をもつ物体の機械的混合であり,本研究ではそのひとつであるコンドリュールに注目し,流体に寄与する反応において反応性が高いリチウム・ホウ素の太陽系円盤における状態を記述し,そこからの状態変化を検出する.その状態変化から流体プロセスとそのスケールを解明する.本研究は高感度局所ホウ素分析法の確立とコンドリュールの高感度局所ホウ素・リチウムの二次元分析を主たる研究課題として設定し計画を立案している. 初年度は,高感度局所ホウ素分析手法の確立にあたった.コンドリュールを構成する鉱物の典型的サイズは数十ミクロンであり,二次イオン質量分析法を応用した.初年度は,標準試料の整備とホウ素局所分析ルーチンの確立を中心とした分析法の開発を行った. コンドリュールのカンラン石に含まれるホウ素は0.00001%以下であり,この程度の元素濃度において,ホウ素分析における最大の問題は汚染である.初年度は分析における汚染の寄与の低減をはかった.汚染源としてはマウント用樹脂,研磨プロセス,洗浄水があげられる.岩石片を固定するのに用いるエポキシ樹脂に含まれるホウ素濃度は0.05%を超える.この濃度はコンドリュールのカンラン石に含まれるそれの5.000倍以上にあたる.樹脂そのものも問題であるが,その樹脂が研磨の際に与える汚染にも注意を払う必要がある.そこで試料準備に用いる樹脂を検討した.また洗浄水についてはイオン水を用い,試料表面を酸でリーチングすることで表面の汚染軽減をはかった.さらにイオンを用いた表面のスパッタを用いブランク・レベルの低減をはかり,最終的に検出限界0.000001%の実現した.その手法を応用し,低濃度における分析確度を保証するため標準試料を作成した.
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