本年度は堆積物へのモリブデンの濃集機構を明らかにするため、新規のin situ化学状態決定法の開発に着手した。分子生物学的手法の一つである蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)と、マイクロX線吸収分光(XAFS)法を組み合わせ、ミクロスケールでの微生物の群集解析と元素の化学状態決定を同時におこなうことを可能とする手法である。 まず、医療分野で用いられる切片作成法を応用し、堆積環境を保持したまま堆積物薄片を作成する方法を確立した。FISHについては、通常のFISH法ではバックグラウンドの影響が大きいため、蛍光強度を増幅するCARD-FISH法を採用することで、鉱物共存化でも微生物を染め分けることが可能となった。マイクロXAFS法は大型放射光施設SPring-8にて行い、鉄のような主要元素についてはEXAFS領域まで測定できることがわかっている。今後は、微量元素であるモリブデンなどの元素にもマイクロXAFS法による分析を応用していく。また、次年度以降は、この手法を実際のモリブデン濃集堆積物へ応用し、モリブデンの化学種変化とその微生物影響の考察といった、未解明な濃集メカニズムを議論していく予定である。
|