平成22年度の研究内容は半透膜を用いた気液平衡器の構築とその評価であった。まず国内外のメーカーから多孔膜・非多孔膜の両方の複数種類(ポリプロピレン、ポリエチレン、テフロン等)の中空糸の半透膜を手配した。その後気液平衡器のデザインを決め、気相液相が通るラインは継手部分を除いて全てテフロン製となるようにした。これは抽出した硫化ジメチル(DMS)やイソプレンの吸着の影響を最大限に減らすためである。高分解能の測定を目指す本研究の方法では試料海水からDMSとイソプレンを平衡抽出し測定するという一連の応答時間をより短くなるようにデザインする必要があった。本研究では気液平衡器の構築をおこなった後、気液平衡器の平衡到達度を測定するためにガスクロマトグラフ(GC-FPD)を使用する予定であったが、その立ち上げに多くの時間を要した。そのため、平成22年度中の気液平衡器の平衡効率の評価まで至らなかった。しかし、年度末には十分な定量性を持つようになり、現在では気液平衡器とGC-FPDを連結させることによって作成した気液平衡器の性能評価を行える段階にある。 また10月にはインド・ゴアで行われた本研究の対象気体であるDMS及びその関連物質を研究する研究者が集まる国際シンポジウム(The 5^<th> International Symposium on Biological and Environmental Chemistry of DMS(P) and Related Compounds)に参加した。時空間的に高分解能な分析による新しい研究手法について研究発表を行い、さらにドイツ・IFM-GEOMARのChrista Marandino博士と本研究に用いる半透膜を使った平衡器に関する情報交換も行った。
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