研究課題/領域番号 |
22740355
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
亀山 宗彦 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教 (70510543)
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キーワード | DMS / イソプレン / 陽子移動反応-質量分析計 |
研究概要 |
平成23度は半透膜を用いた気液平衡器の平衡抽出効率の評価を行った。中空糸膜のうち、汎用性が高く、多孔質の中空糸膜であるゴアテックス膜を用い、国立環境研究所の谷本浩志博士が所有する陽子移動反応質量分析計(PTR-MS)と接続し検証実験を行った。ゴアテックス膜は気孔率の違う2種類(TA:気孔率50%、TB:気孔率70%)を準備し平衡器を作成した。平衡器は海水が流れるシェル(テフロンチューブで作成)の中に中空糸膜を通し、液相と気相を逆方向に流すことによって連続的に海水中の気体を抽出することができる。平成23年度は単一の中空糸膜を使った検証実験を行った。単一の膜を使うことはより省スペースかつ実際の観測において取り回しが効きやすいようにするためである。Ooki and Yokouchi(2008)で用いられた標準ガスとの平衡水作成装置を使い濃度既知の人工海水を作成し、各流量等を変化させることによって平衡抽出効率の評価を行った。2種類のゴアテックス膜のうち、気孔率の高いゴアテックスTB膜は侵水圧が低いため(0.5kg/cm^2)膜内にシェル内の海水が膜内に侵入した。膜内へ海水が浸入するとPTR-MSへの海水の流入の可能性があるため、ゴアテックスTB膜は本研究目的には不適であることがわかり、ゴアテックスTAを用いて研究を進めた。膜単一のゴアテックスTA膜を使った場合、平衡効率はDMSで最大約80%にとどまった。中空糸膜を長くし検証を行ったが、膜内への人工海水の滲出がみられ、単一のゴアテックス膜では平衡抽出効率のこれ以上の改善は難しいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去に報告されている単一の抽出膜による抽出が難しく、大幅なデザインの変更が必要となった。複数の抽出膜の使用が必要不可欠であり、その作成材料の手配等に時間がかかったため、現段階で実海洋観測に使用できる状態ではなく、研究の達成度としては遅れているといえる。しかし、単一膜で80%の平衡効率を達成しており、複数本の膜を使うことによって改善が見込まれるため、24年度には完成が見込まれるためやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではまず平衡器の作成を通した分析法の確立が最優先事項である。これまで複数種類の中空糸膜を使った試験を行った結果、単一の膜での気液平衡への到達は難しいことが分かった。そのため、本研究では複数本の中空糸膜を使って平衡到達度を高めるように対応し、100%の平衡到達度を目指す。
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