平成24年度の研究実施計画では「平衡抽出効率の評価」および「観測における使用」を計画していた。まず、「平衡抽出効率の評価」に関してはDMS、イソプレン共に中空糸膜を並列に接続する複数のゴアテックス膜を使ったものでも100%に達することはできなかった。この主な原因として、海水とキャリアガスとの接触時間が短いことが考えられる。DMSは80%の抽出効率が可能となったが、この抽出効率の温度等に対する依存性に関しては評価することができなかった。また、イソプレンに関しては標準海水を作成することが難しく、標準海水自体の値の不確実性が大きいため、抽出効率の評価ができなかった。これは理想的にはイソプレンの連続モニタができる装置(例えば陽子移動反応-質量分析計)による標準物質生成のモニタが必要であったと思われる。次に「観測における使用」に関しては平成24年6~8月にカナダ・ラヴァル大学において行われたMaurice Levasseur教授との共同研究において、本研究で開発した平衡抽出装置の運用を試みたが、彼らの研究室で用いられているガスクロマトグラフ-炎光光度検出器(GC-FPD)との連結は難しく、実際の海水試料での測定法の比較は実現することができなかった。しかし、Maurice Levasseur教授と親交の深いブリティッシュコロンビア大学のPhilippe Tortell博士が用いている半透膜平衡器に関する情報を得ることができたため、新たな改良の余地を見出すことができた。
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