研究課題/領域番号 |
22740357
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50396793)
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キーワード | 境界層プラズマ / 原子分子過程 / イオンビーム / 密度分布計測 / 中性粒子 / 再結合プラズマ / 荷電交換反応 |
研究概要 |
本研究は、パルス状の高エネルギーイオンが生成する流れ場において、荷電交換や再結合によりプラズマと中性粒子が結合した系の時間応答を解明することを目的としている。本年度は、分光学的手法による電子温度・電子密度計測の高精度化に着手するとともに、高エネルギーイオン流れ場とプラズマの相互作用に関する実験を開始した。具体的な実施内容と成果は以下のとおりである。 1 干渉フィルター型高速受動分光システムを単一波長から多波長(3チャンネル)に拡張し、高速に変化するプラズマの線スペクトル強度を取得した。得られた線スペクトル強度から電子密度を導出し、静電プローブ計測と同程度の精度で計測できることを確認した。 2 多視線受動分光装置を整備し、発光強度の空間分布を取得した。視線方向に積分された発光強度から逆変換により局所発光強度を導出する解析手法を開発し、高空間分解能で発光強度分布を得た。 3 プラズマ中へ大電流ビームを入射するために、小型イオン源を用いたビーム入射システムの残留ガス圧力分布を改善した。ビーム軌道・収束性制御を行い、幅広いエネルギー領域(0.5-10keV)でのビーム引き出しに成功した。 4 イオンビーム入射に対するプラズマの応答を実験により調査し、中性粒子密度が変化する現象を観測した。この現象がビームと中性粒子の荷電交換反応により説明できることを線スペクトル強度の時間変化から示した。 5 大型装置における高エネルギーイオンの軌道を調査しダイバータプラズマとの相互作用を特に荷電交換反応の観点から検討した。 6 レーザー誘起蛍光法およびレーザートムソン散乱法を用いたプラズマ計測の適用事例を調査し、プラズマー中性粒子結合系へ適用可能なパラメータ領域とポート概念設計を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画とほぼ同程度の進捗状況で、本研究を構成する開発・調査・実験が実施されている。さらにこれらを実施する過程で、当初の予想以上に高エネルギーイオンがプラズマ・中性粒子結合系に影響を及ぼすことが実験的に明らかになった。より精密な実験を実施することで高度なモデリングが可能になり、磁場閉じ込めプラズマのダイバータ領域熱負荷低減に向けて研究の展開が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ密度や流れ場強度をより精密に制御した実験により研究の展開が期待できる。そこで以下の方策で研究を推進する。(1)プラズマ密度は加熱入力により制御している。これまでは一定の加熱入力であったが、フィードバックしながら入力信号を時間変化させることで、最適な密度を生成し維持することを試みる。(2)流れ場強度はイオンビーム電流およびエネルギーの制御により定常状態が維持できた。今後パルス状ビーム入射に対するプラズマの時間応答を調査するためには、ビーム光学系の制御も重要になると予想される。そこで高速高安定な電源を使用して偏向電極の制御を試みる。
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