研究課題/領域番号 |
22740357
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡本 敦 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50396793)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 境界層プラズマ / 原子分子過程 / イオンビーム / 中性粒子 / 再結合プラズマ / 高エネルギーイオン |
研究概要 |
本研究は、パルス状の高エネルギーイオンが生成する流れ場において、荷電交換や再結合によりプラズマと中性粒子が結合した系の時間応答を解明することを目的としている。本年度は、分光学的手法による電子温度・電子密度の空間分布計測に着手するとともに、イオン流れ場計測に関する実験を開始した。具体的な実施内容と成果は以下のとおりである。(1) 分光計測により定常ヘリウムプラズマにおける再結合スペクトルの観測に成功した。また得られた線スペクトル強度から電子温度、電子密度の空間分布を計測した。(2) イオン流れ場計測のために方向性プローブを設置し、また、静電プローブ計測システムの高周波雑音耐性向上のためのフィルタ回路を設計製作した。これらを用いて方向性イオン飽和電流の径方向分布を取得した。(3) プラズマに入射するビームのエネルギー増強のためにイオン源の高耐圧改造を行い、20keVまでのビーム引き出しに成功した。ファラデーカップによるビーム電流計測を行い、イオン源運転パラメータの調査を行った。(4) 再結合テスト領域のプラズマ-中性粒子結合系の応答を調査した。具体的には、供給ガス流量制御により中性粒子密度を変化させ、分光計測システムと静電プローブ計測システムを用いて電子温度と電子密度の応答を計測した。中性粒子密度の増加に対して電子密度と電子温度が共に減少する領域が存在することを見出した。(5) 大型装置における高エネルギーイオンの軌道を計算コードを用いて調査した。軌道の旋回運動の初期位相、ピッチ角、およびトロイダル角の分布とプラズマ対向壁における衝突位置の分布の関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画とほぼ同程度の進捗状況で、本研究を構成する開発・調査・実験が実施されている。さらにこれらを実施する過程で、再結合スペクトルの空間分布が実験的に明らかになりつつある。その他の物理量の空間分布も精密に計測することで高精度のモデリングが可能になり、磁場閉じ込めプラズマのダイバータ領域熱負荷低減に向けて研究が展開できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
プラズマ密度の精密な空間分布計測実験により研究の展開が期待できる。そこで二次元素子と干渉フィルターを組み合わせた分光計測システムを開発し、精密な発光強度分布に基づく電子密度計測を行う。また、イオン流れ場強度の制御が研究の展開に重要である。そこで運転シーケンスの最適化に基づくイオンビーム注入装置の高性能化をビーム入射実験に先立ち実施する。
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