研究概要 |
先進ナノスコピックプラズマによる光敏感物質内包カーボンナノチューブ光デバイス創製に関する最終年度計画に基づいて以下の成果を得た. 1.前年度までに合成に成功しているアザフラーレン(C_<59>N)内包単層カーボンナノチューブ(C_<59>N@SWNTs)の物性解明を目的に実験を行った.これまでの結果から,C_<59>N@SWNTsがn型伝導特性を示すことが本研究により明らかになっているが,そのメカニズムは不明のままであった.光電子分光分析による詳細な測定と,第一原理計算によるシミュレーション結果から,通常二量体配位を取りやすいC_<59>N分子が,SWNT内部では単量体構造となり,このC_<59>N分子単量体とSWNTとの極めて大きな相互作用が,特異なC_<59>N@SWNTsの電気伝導特性発現の原因であることを明らかとした.具体的には,C_<59>N分子からSWNTに電子が供給されることにより,C_<59>N分子の単占有分子軌道エネルギーが明確に高エネルギー側へシフトし,C_<59>N分子単占有軌道がSWNTの伝導帯へ浅いドナー状態として振る舞うことを見出した.この効果を考慮することにより,実験結果を精度良く説明することができるため,本研究によりC_<59>N@SWNTsのn型伝導特性の起源を解明することに成功したと言える. 2. 近赤外光を利用した高効率太陽電池の創製を目的として,C_<60>内包SWNTsとシリコンのヘテロpn接合を用いたデバイスを創製し,太陽電池特性を測定した.この結果,通常の金属混入のあるSWNTsに比べ,半導体のみのSWNTsを利用することで太陽電池の特性を大幅に改善することに成功した.さらに,半導体SWNTs表面にあらかじめ金ナノ微粒子をコーティングすることにより,太陽電池の特性が大きく向上することを見出した.これは,SWNTs表面に金ナノ粒子を配置することにより,直列抵抗成分が抑制された効果に起因すると考えられる.
|