研究概要 |
本研究では,液中内の気泡におけるマイクロ波励起の非平衡プラズマ現象における基礎過程を解明することを目的としている.本年度は,同一サイズの気泡内に同一サイズのプラズマを生成させる装置開発を行った.水中内に設置したマイクロ波アンテナに単一の気泡を周期的に発生させるため,高速動作のピエゾバルブを用いてガスをパルス的に供給した.気泡内でのプラズマ生成過程を気泡生成と同期して観測する測定系を構築し,気泡サイズの変化に伴う非平衡プラズマ生成の様子を高感度の高速カメラを用いて観測することに成功した.画像計測より液中内の気泡に生成されるマイクロ波プラズマは,DCプラズマとは異なりフィラメント状にはならず,アンテナ近傍に局所的に存在することが判明した. 次に,気泡内の反応プロセスの詳細解明するため,液体内の気泡内部に生成する非平衡プラズマを時分解発光分光計測した.分光許測より,導入ガス種であるHe原子からの発光および水の解離に由来して生成されるH原子,OH分子からの発光が観測された.Heガス導入後のマイクロ波照射タイミングを変化させることで,異なる気泡サイズにおいて,気泡サイズ変化の時間スケールに比べて十分に短い時間の安定したパルスマイクロ波プラズマを生成させることが可能である.気泡内に生成されるパルスマイクロ波プラズマからのHeおよびH原子の発光強度計測より,マイクロ波入射後,単調に増加し,その後減少することが見出された.発光強度増加の時間スケールは,パルスマイクロ波の入射パワー増加の時間スケールとほぼ同じであることから,マイクロ波入射パワー変化による電子密度・電子温度変化に起因するものだと考えている.一方,HeおよびHからの発光強度は,マイクロ波入射パワー増加後一定となる時間帯において減少していることから,気泡内のガス成分変化がプラズマ生成に影響を与えていると考えられる.気泡内のガス成分変化は,気液界面での相互作用によるため,プラズマ生成に伴う気液界面反応を解明することの重要性を初めて実験的に明らかした意義あるものである.
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