研究課題/領域番号 |
22740369
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
廣田 真 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門, 任期付研究員 (40432900)
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キーワード | 無限自由度力学系 / 磁気リコネクション / 二流体プラズマ / 変分原理 |
研究概要 |
プラズマは巨視的に見れば、イオンと電子が一緒に動く一つの流体とみなすことができるが、微視的に見ると、それぞれの慣性やサイクロトロン半径の大きさが異なることにより、二つの流体運動のズレが顕著となる(二流体効果)。こうしたマルチスケール性はプラズマ物理において根深い問題であり、理論的・数値的にその取扱いが大きな課題となっている。本研究では、太陽のコロナループや磁場閉じ込めプラズマ装置において大規模な磁場構造の崩壊を引き起こしている「無衝突磁気リコネクション」の問題に焦点を当て、ハミルトン力学的な新しい解析手法の構築を試みた。 具体的にはテキサス大学のMorrison教授と協同で、電子慣性の効果を含めた簡約化MHD方程式の安定性解析を行った。線形安定性解析では漸近接続法による解析が従来よく用いられてきたが、非線形段階の解析はこれまで困難であった。本研究では支配方程式のハミルトン構造に着目して変分原理を定式化し、仮想的なプラズマの変位に対するポテンシャルエネルギーの減少傾向を見積もることで、不安定性の線形成長率や非線形段階での加速メカニズムを明らかにした。この方法は、解析が難しい特異摂動を含む方程式を厳密に解かずとも、簡単な試行関数を用いた発見的な考察によって、現象の力学的な描像を得る鴨ことができる。従って、ハミルトン系のマルチスケール問題に対する普遍的で強力な解析手法となることが今後期待できる。 これらの成果は、理論応用力学講演会、日本物理学会およびアメリカ物理学会プラズマ物理分科会において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は摂動展開による非線形解析を予定していたが、マルチスケール性をもつ問題においては摂動展開が収束しないという問題に直面した。変分原理を用いた解析手法へ方針を転換したため、成果を出すのに時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
電子慣性の効果の他にも二流体効果はいくつか存在し、磁気リコネクションに影響を及ぼすことは確かであるのでそういった拡張モデルへさらなる応用を試みる。幸い、二流体効果はプラズマにエネルギー散逸をもたらすものではないので、ハミルトン構造は存在し、本研究の理論が適用できることが期待される。
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