研究課題/領域番号 |
22750004
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀本 訓子 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40322672)
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キーワード | 走査型トンネル顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / プラズモン / 増強ラマン散乱 / 高空間分解能分光 |
研究概要 |
本年度は、金の探針を作製し金(111)単結晶基板や金蒸着基板、あるいはグラファイト基板などに金ナノプレートを圧着した基板を用いることによって、繰り返し安定してSTM探針増強ラマン分光法(STM-TERS)を行うことができるようになった。また、STMのトポ像測定時に同時にラマンシグナルを測定するラマンマッピング(トポ像とともにトポ像のように各位置でのラマンシグナルの強度を画像化する)が測定可能になり、ドリフト(探針が時間経過とともに試料表面で元の位置からずれてしまう事)の影響なしに試料の構造とシグナル強度の比較ができるようになった。STM-TERS測定時にSTMのトンネル電流やバイアス電圧が大きい時に現れる特徴的なスペクトル変化(特定波長の発光およびラマンピークの出現)についてはパラメーター依存性を系統的に測定した結果、プラズモン励起に由来する発光が入射光とトンネル電子の両方が合わさって励起されている可能性が示唆された。また、入射光強度に対するラマン強度依存性を測定し、STM-TERSでは最大のラマンシグナルが得られる上限の入射光強度が存在することがわかった。光強度によるトポ像の変化は種々の実験(入射光の強度や照射時間、STMの走査モード、入射光の配置などによるトポ像変化の測定)から、入射光による探針および探針ホルダーの熱膨張によるものであると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は安定したSTM-TERS測定およびラマンマッピングが可能になり、それに必要な探針や基板を作製することができるようになった。またSTMのパラメーターに対するスペクトルの変化を系統的に調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は種々の測定条件の影響を評価し、分子の化学情報を定量的に得られる手法としてSTM-TERSを確立させる。具体的にはSTM-TERS(スペクトルおよびラマンマッピング)を測定し、基板の凹凸、用いるレーザーの波長、STMのトンネル電流やバイアス電圧などに対するスペクトル依存性を調べる。また探針形状や装置の光学的性能を改良することによって空間分解能および感度を向上させる。
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