研究概要 |
今年度はII-VI型半導体としてナノエレクトロニクス分野での応用が期待されている酸化亜鉛(ZnO)の安定ユニット探索を目的として,ZnOクラスター:(ZnO)_n^+の生成と構造変化について検討した。 生成源では,酸化亜鉛ではなくZn棒を試料として用いた。そして,ヘリウムに酸素を混合したキャリアガスを用いレーザー蒸発法を適用して気相中で反応させ,(ZnO)_n^+は酸素濃度10%で効率よく生成されることがわかった。また,クラスター生成源にも改良を加え,大きいサイズのクラスターを効率よく生成できるようにした。この性能は,生成分布が既知であるアルミニウムクラスターの生成によっても確認・最適化を行った。 生成させた(ZnO)_n^+をドリフトセルに入射し,イオン移動度分析法を適用してサイズ増加による構造変化について検討した。そしてセルに高電圧で入射すると,n≧8で,よりコンパクトな構造へと変化することを見出した。理論計算からはn=7-8で単環構造から複環もしくは立体構造へと変化することが提唱されており,このような構造変化を実際に観測することができた。加えてn=6の構造が,隣接するn=5および7よりもコンパクトであることを明らかにした。このように不連続な安定構造の変化は,これまでの理論計算では得られておらず,本研究によって安定ユニットにつながる構造が得られたと考えられる。また,ドリフトセルに低電圧で入射した場合にはn=7-8での構造変化は観測されず,さらにかさ高い構造になることがわかった。すなわち,高電圧でのセルへの入射によるクラスターの加熱(アニール)によって,より安定な構造へと変化させることができた。 一方で,異性体分離後の衝突誘起解離スペクトル測定からクラスターの安定性について知見を得るため,まずは炭素クラスター7-10量体(直線と環状構造の異性体が共存するサイズ領域)を対象として検討を行った。そして,直線構造からは主にn=3が,環状構造からはn=2-4が脱離するという,異性体の構造による解離反応の違いを見出した。
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