研究概要 |
2,3,6,7,10,11-ヘキサプトキシトリフェニレンを出発原料として、トリチアコロネンの合成中間体であるヘキサリチオトリフェニレンの発生条件の検討を行った。TMEDA存在下、過剰量のn-BuLiを作用させ、24時間加熱かくはんし、重水で反応を停止し、生成物の重水素化率からヘキサリチオトリフェニレンの発生率を求めた。その結果、8当量のn-BuLiを用いた場合が、最も効率よくヘキサリチオ体が発生することを見いだした。n-BuLiの当量を増加させたところ、重水素化率は向上したものの、回収率が低下し、副成物の生成が示唆された。続いて、発生させたヘキサリチオ体に過剰量の単体硫黄を反応させて、生成物の解析を行った。その結果、トリフェニレンの湾部の1箇所、2箇所、および3箇所にそれぞれ硫黄原子が導入されたと思われる化合物が得られた。1^H NMRの結果、分子の対称性、芳香族プロトンの消失などから、トリフェニレンの3箇所の湾部に硫黄原子が導入されたと推察した。この生成物を水素化アルミニウムリチウムで還元し、ヘキサチアコロネンの前駆体である、ヘキサメルカプトリフェニレンへと誘導した。現在得られた生成物の単離、構造決定を行っているところである。 また、トリフェニレン周縁のアルコキシ基をブトキシ基からエトキシ基へと変更した分子についても同様の検討を行い、効率よくリチオ化が進行することを見いだしている。
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