研究概要 |
前年度までの検討結果として、2,3,6,7,10,11-ヘキサブトキシトリフェニレンを出発原料として、発生させたヘキサリチオトリフェニレンに過剰量の単体硫黄を反応させた結果、トリフェニレンの3箇所の湾部に硫黄原子が導入されたと推察した。この生成物を水素化アルミニウムリチウムで還元し、ヘキサチアコロネンの前駆体である、ヘキサメルカプトトリフェニレンへと誘導した。 また、導入する原子として、硫黄原子に代えて、リン原子を導入することも検討した。リン試剤として、ジクロロフェニルホスフィンを用い、ヘキサリチオトリフェニレンに対し、過剰量のリン試剤と反応させたところ、同様にトリフェニレンの湾部の3箇所に6つのリン原子が導入されたと考えられる分子をマススペクトルにて同定した。 これらの生成物の酸化還元挙動についても併せて検討した。 また硫黄類縁体については光学特性についても検討を行い、この分子が弱いながらも蛍光を発することを見いだしている。硫黄原子の導入に伴って、分子の平面性が大きく崩れていると予測されるが、このようにトリフェニレンの蛍光特性を維持していることは大変興味深い結果である。 また、トリフェニレン周縁のアルコキシ基をブトキシ基からエトキシ基へと変更した分子についても同様の検討を行い、効率よくリチオ化が進行することを見いだしている。この分子はブトキシ体と比較し、溶解性に欠けるものの、結晶性が良く、化合物の単離には適していた。
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