「カテナン」は複数の環状分子同士が互いに貫通しあった構造を持つ分子であり、カテナンを構成するそれぞれの環状分子は、いずれかの環状分子の共有結合を切らない限り分離することは不可能である。カテナンは分子を形作っている環状分子が非共有結合で連結しているため、環状分子が回転運動することができる。このカテナンの運動性を利用したナノスケールの分子デバイス・スイッチへの展開が期待されている。しかし環状分子が3個連結した[3]カテナンは合成が難しく、これまで[3]カテナンを用いた機能性分子はほとんど報告されていない。申請者はこれまでに[3]カテナンの効率的合成法を開発した。今回この合成法を利用し、[3]カテナンに固有の回転運動を外部刺激(温度、金属イオン等)により制御し、色が変化するクロミズム分子を作り出すことを目的とし、研究を進めた。 [3]カテナンを基本骨格に持つクロミック分子を設計し、16段階の反応を経て合成した。合成した[3]カテナンにジアミンを添加すると、紫外吸収スペクトルが等吸収点を持つ変化をした。ジアミシのセンシングに本[3]カテナンが利用できることが明らかとなった。一方金属イオンの添加による吸収スペクトルの変化は観測されず、金属イオンのセンシングには本[3]カテナンは適していないことがわかった。また温度を変えて合成した[3]カテナンの蛍光スペクトル(励起波長290nm)を測定したところ、温度が上昇するにしたがって蛍光発光強度が減少していくとともに、最大蛍光波長が長波長シフトしていくことが明らかとなった。本[3]カテナンの温度センサーとしての機能が示唆された。 色調変化を目でとらえることを可能にするため、可視領域に吸収帯のある発色団を持つ[3]カテナンをあらたに合成した。
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