研究課題/領域番号 |
22750036
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
廣戸 聡 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30547427)
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キーワード | ポルフィリン / インドール / 近赤外色素 / ピラジン / 酸化 |
研究概要 |
本年度は二つのテーマについて研究を遂行した。一つはインドール四量体を合成し、ポルフィリン型の非局在化型ラジカル化合物の創出を目的として研究を行った。遷移金属触媒反応を駆使することによりインドール四量体の合成に成功し、その構造を明らかにした。酸化を行ったところ、構造が平面化し、近赤外領域に吸収を持つ色素になることを見いだした。これはさらに金属錯化することにより長波長領域に吸収をもつようになることを明らかにした。得られた化合物は新しい近赤外色素として応用が期待できる他、狭いHOMO-LUWOギャップを用いた電子輸送性材料としての応用も期待出来る。今後はさらに置換基を導入することにより目的のラジカル化合物の合成が達成できると考えている。 次にポルフィリンを基質として酸化することにより新たに非局在化型ラジカルが得られるか検討を行った。ポルフィリンのβ位にアミノ基を導入し、酸化を行ったところ、予想外にもピラジン環で結合したポルフィリン二量体が得られることを明らかにした。この反応はモノアミノ体でも進行し、位置選択的に進行することが分かった。さらに、より合成の簡便なテトラフェニルポルフィリンでも同じ条件で反応を行ったところ、ピラジン縮環のポルフィリン二量体の他に、β結合ジアミノポルフィリン二量体が得られることが分かった。後者は新しいポルフィリン型キラル配位子としての応用も考えられ、本反応が非常に有用な反応であることが証明できたと言える。現在、他の基質でもこの反応が適用できるか検討を行っており、更なる応用を検討している途中である。この反応を広く発展させることができれば、新しい電子材料および触媒の合成に大きく貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本研究テーマに関して3報の論文および数件の学会発表を行っている。当初の目的であるπ共役ラジカルの安定化についてはあまり良い成果は得られていないが、本研究に関連して新たな発見があり、現在論文にまとめている最中である。以上のことより順調に本研究の目的は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たに見つかったπラジカルの特殊な反応性について追究していく予定である。特に、ポルフィリン以外の基質、縮合させることにより機能性材料として有用な化合物の合成を目的として研究をすすめる。本反応は特に歪みの大きい化合物の合成について新たな知見を与えるものと期待しており、これまで合成の困難であった機能性材料を簡便に合成できる道を切り開くことができると考えている。最終的にはボウル型の化合物に本反応を適用し、フラーレン型の化合物を合成することに挑戦する予定である。本研究を達成することでπラジカルの新しいアウトプットを示し、πラジカルの化学の発展に貢献していきたい。
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