研究概要 |
キラルカルボン酸誘導体はあらゆる生命現象の維持に関わる生体機能分子であり,その機能の発現には分子キラリティーが重要な役割を担っている.また近年,キラルカルボン酸を活用した不斉反応剤や機能性材料の開発が広範に行われている.一方,H22年度までに本研究では,キラルシラノールの立体選択的合成とその立体特異的な変換について研究を行い,単純なキラルカルボン酸を含む多様なキラルケイ素化合物の不斉合成を達成している.そこで,H23年度の研究では,ケイ素の特性を活かした多様な機能を有するキラルケイ素化合物の創製を指向して,複数の官能基を含むキラルカルボン酸誘導体の不斉炭素をケイ素に置き換えたキラルケイ素カルボン酸誘導体の不斉合成について計画した.実際に検討を行った結果,本申請者が開発したアルコキシビニルシランの開裂型オゾン酸化を用いることで,ケイ素上にエーテル酸素官能基が導入されたキラルケイ素カルボン酸誘導体を合成する新手法を開発することに成功した.すなわち,アルコキシにとアルコキシビニルを導入した,新規キラルケイ素化合物を光学活性体として調製し,それらキラルビニルシランにオゾンを作用させることで,期待した酸化的開裂反応が進行して対応するキラルケイ素カルボン酸誘導体を光学活性体として得ることに成功した.本結果は従来に無い高度官能基化されたキラルケイ素化合物の不斉合成例であり,キラルケイ素を活用した新しいキラルテクノロジーの基礎的知見として意義深い成果といえる.
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