研究概要 |
CO_2からCOへの2電子還元反応の光触媒となることが知られているレニウム(I)錯体について、より高効率な光触媒反応の実現を目指して、安定的に電子を蓄積し、光触媒部への効率的な電子供給を可能にする電子プールをレニウム(I)錯体の近傍に配置した新規錯体を合成し、その光物性および光触媒能を評価した。光触媒部としてトリアリールホスフィン配位子を2個有するレニウム(I)錯体cis,trans-[Re(diimine)(CO)_2(PAr_3)_2]^+を用い、また、電子プールとしてビオローゲンをホスフィン配位子もしくはジイミン配位子にアルキル鎖で連結した錯体を合成した。これらの錯体の発光スペクトルを測定したところ、電子プールを持たないレニウム錯体と比較して、それぞれ87%、77%の消光が観測された。さらに、犠牲還元剤トリエタノールアミンを含むN,N-ジメチルホルムアミド溶液に、アルゴン雰囲気下において365nmの単色光を照射したところ、いずれの錯体の場合においても、ビオローゲンの1電子及び2電子還元に由来する紫外可視吸収スペクトル変化が、続いてレニウム錯体の一電子還元種の生成に特徴的な吸収変化が観測された。このことから、これらの錯体は、分子内電子移動反応によって発光が大きく消光されるとともに、一分子中に3電子が蓄積されるという特異な性質を示すことがわかった。また、CO_2雰囲気下において同様の光照射を行ったところ、CO_2還元光触媒反応が確認された。例えば、ホスフィン配位子に電子プールを連結した錯体の場合、アルゴン雰囲気下と比較して、分子内での電子蓄積の速度が遅くなると同時に、COの生成のターンオーバー数TNcoが2.1となった。さらに、光増感剤としてルテニウム(II)トリスビピリジン錯体を共存させるとTNcoが5.1まで増加した。
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