有機-無機複合材料を基盤としたナノスケールイオン伝導体に関して、ナノ界面がイオン伝導特性へ及ぼす影響およびナノサイズ効果を明らかにし、全固体充電池の実現や新たな界面化学機能の開拓、イオン伝導の量子効果の発現といった新規ナノイオニクスを創製することを目的とし、H22年度は以下に関して主に下記2項目に関して研究を実施した。 [1]ヨウ化銀-ポリマーナノ粒子の低温におけるイオン伝導挙動 10ナノメートルのサイズを有する有機ポリマー保護ヨウ化銀ナノ粒子に関して、インピーダンス法を用い室温よりも低い温度におけるイオン伝導度を調べた。その結果、-190℃において、抵抗率が約2×10^<-2>Ωcmであった。このことより、ヨウ化銀ナノ粒子は、室温のみならず、極めて低い温度においても高いイオン伝導性を有することが明らかとなった。 [2]放射光X線回折手法を用いたヨウ化銀-ポリマーナノ粒子の低温結晶相挙動 10ナノメートルのサイズを有する有機ポリマー保護ヨウ化銀ナノ粒子に関して、放射光X線回折(XRD)を用いて低温における結晶相を調べた。その結果、冷却過程において、約40℃で超イオン伝導相であるα相からβ/γ相への相転移が見られ、それ以降の低い温度では、β/γ相の状態であることが明らかとなった。 近年、バルクでは見られない不純物や欠陥に起因した接合障壁の緩和や、イオンの移動に伴うスイッチングといったナノイオニクス現象が見出され、ナノイオニクスでは、電子だけでなく空間を占有できるイオンの輸送現象を用いることができるため、これまでの電子工学で実現し得なかった新規デバイスやナノ構造体反応場構築することができる。しかしながら、ナノサイズにおけるイオン伝導体の基礎物性についての知見が極めて少なかった。今年度は、低温におけるイオン伝導挙動および結晶状態に関する知見が得られ、これらは極寒地でも動作可能な全固体電池への実現に寄与することが期待される。
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