研究概要 |
本研究では、水からの水素ガス生成機能を有する単一分子光水素発生デバイスの開発と機能評価を行う。これまでの研究により、水素発生デバイスによる水素生成反応は二量体形成を経由して進行すると示唆されたため、平成22年度は、第一例目の光水素発生デバイスをアルキル鎖により連結した二量体型光水素発生デバイスの合成とその触媒機能評価を行った。新たに合成した二量体型光水素発生デバイスは、第一例目のデバイスの2倍ほどの触媒活性を示し、第一例目のデバイスによる水素生成反応が二量体形成を経由して進行しているという仮説を強く支持する結果を得ることができた(Chem.Asian J., 2010)。この結果は、今後の光水素発生デバイスの設計において重要な知見となるものである。また、これまでに研究代表者らが行ってきた光水素発生デバイスの開発に関する研究をChemical Communication誌の総説(Feature Article)として発表した。 一方、太陽光による水素生成反応の駆動を目指し、太陽光を有効利用できる光増感分子の開発とこれを用いたTiO2光電極の作製を行った。特に、光増感分子のTiO2薄膜への吸着について詳細な検討を行い、吸着溶媒が光電変換効率に及ぼす影響を明らかにした。最適な吸着条件を決定するだけでなく、特定の吸着溶媒において光電変換効率が大きく低下する理由を明らかにする事に成功した。吸着溶媒と光電変換効率に関する詳細な検討はこれまでほとんど例が無く、本成果は今後の高性能TiO2光電極の作製において極めて有用な成果となると考えられる。本成果については、現在論文執筆の最中であり、平成23年度前半に投稿の予定である。
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