研究概要 |
白金族金属触媒は金額にして我が国で出荷される触媒の7割を占めるが、高価なうえ希少金属のため代替触媒の開発が急務である。これまでに我々は安価な5-7族金属で構成される無機のクラスター化合物が触媒として利用できることを世界に先駆けて見いだし、ついで様々な反応を試みたところ、白金族金属と同様の触媒活性を示すことを予備的に見いだした。そこで白金族金属を用いて行われている様々な反応をクラスターを触媒として試みた。モリブデンクラスターをガス気流下300-450℃で加熱活性化処理後、引き続き温度を変えずにフェニルアセチレンを反応させるとスチレンへの水素化が選択的に進行することを見いだした。さらに、1-および2-ペンチンや1-および2-,3-ヘキシンのような脂肪族アルキンを反応させてもオレフィンへの水素化が進行することを見いだした。一方、シクロヘキセンを反応させると300-350℃ではシクロヘキサンへの水素化が選択的に進行し、400-450℃ではベンゼンへの脱水素が選択的に進行することを見いだした。反応温度による選択性の違いは、等圧下では高温になるにつれ分子数の増える方向に平衡が偏るとするルシャトリエの法則により説明される。アルキンの水素化やシクロヘキセンの水素化・脱水素は主にPdやPtなどの白金族金属を触媒として行われている反応である。以上のことから、クラスターが白金族金属代替触媒として利用できる可能性が示された。
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