研究概要 |
本研究では、優れた物性や新機能を持つ高分子材料の合成や高効率な物質変換反応を目指して、希土類錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な錯体触媒の開発を行っている。本年度は、まず様々な配位子を持つハーフサンドイッチ型スカンジウムジアルキル錯体を用いて、共重合を詳細に検討した。 スカンジウム錯体(C_5Me_4C_6H_4OMe-2)Sc(CH_2SiMe_3)_2(thf)と[Ph_3C][B(C_6F_5)_4]を組み合わせた触媒系がスチレンとカプロラクトンの共重合反応に高い触媒活性を示すことを見いだした。得られた共重合体にはシンジオタクチックポリスチレン鎖が含まれており、これはスチレンがシンジオタクチック選択的にカプロラクトンとブロック共重合をした初めての例である。 一方、希土類ジヒドリド種"(L)LnH_2"はユニークな反応性を示すため、近年注目されているが、これまではC_5Me_4SiMe_3のような嵩高い配位子を有しかつ比較的イオンサイズの小さい希土類金属からなる四核ヒドリド錯体にほぼ限られていた。ビス(アミノベンジル)希土類錯体[(C_5Me_4R)Ln(CH_2C_6H_4NMe_2-o)_2](Ln=Sc,Y,La-Lu; R=SiMe_3,Me,Et,H)に水素を反応させることにより、C_5Me_4SiMe_3基の他、C_5Me_5基やC_5Me_4H基などを有する新たな四核、五核、六核の希土類ヒドリド錯体の合成に成功し、またこれまで得られなかったランタンLaなどの大きなイオン半径の金属を有するポリヒドリド錯体[(C_5Me_4SiMe_3)LaH_2]_4(thf)_2の合成を実現した。
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