研究概要 |
本研究では、優れた物性や新機能を持つ高分子材料の合成や高効率な物質変換反応を目指して、希土類錯体の特異な性質を利用した高活性、高選択的な錯体触媒の開発を行っている。本年度は、まず様々な配位子を持つハーフサンドイッチ型スカンジウムジアルキル錯体を用いて、重合及び共重合を詳細に検討した。その結果、カチオン性ハーフサンドイッチ型スカンジウムアルキル触媒を使うことにより、スチレン、エチレン及びヘキサジエンまたはヘプタジエンの3元共重合に初めて成功し、シンジオタクチックスチレン鎖とシクロペンチルやシクロヘキシル構造を有する新しいタイプの3元共重合体が得られた。また、スチレン、イソプレン、ブタジエンモノマーそれぞれに対して高い立体選択性を示す2種類のスカンジウム触媒を組み合わせ、さらに2つの触媒間でポリマー成長鎖を自由に行き来させることができるチェーンシャトリング試剤を用いて、どのモノマーでも高度に立体制御された、シンジオタクチックポリスチレン、シス-1,4-ポリイソプレン、シス-1,4-ポリブタジエン構造を有する「三元共重合体」の合成に初めて成功した。 一方、希土類トリスベンジル錯体Ln(CH_2C_6H_4NMe_<2-o>)3(Ln=Sc-La)と1当量の様々なシクロペンタジエニル配位子を反応させると対応するビスベンジル錯体が高収率で得られた。トリスベンジル錯体を使うことにより初めて全希土類元素においてハーフサンドイッチビスアルキル錯体の合成が可能となった。また(C_5Me_4SiMe_3)Ln(CH_2C_6H_4NMe_<2-o>)_2錯体(Ln=La-Sm)と水素との反応により、これまでに合成することが困難だったイオン半径の大きな希土類ポリヒドリド錯体の合成に初めて成功した。
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