研究概要 |
二重電極法は,電解液の対流の方向に作用電極と検出電極を設置し,それぞれ独立に電位を制御して,作用電極上での電気分解反応による生成物を検出電極で検出する分析手法である。古くから電極表面の反応を解析する重要な手段の一つとして知られ,二次電池や燃料電池開発,めっき,腐食,生体関連物質のレドックス挙動,生体材料の特性試験など幅広い分野で用いられてきた。一方,径が精密に制御された無数の円筒状真直の孔をもつトラックエッチ膜フィルターに白金等をコーティングすると,微細な孔を流路とする極めて高感度なフロー型の電気化学検出器(フィルター電極)を作製することができる。本研究では,このフィルター電極を重ねた形状を持つ新しい二重電極法を開発することが目的である。これは,測定感度,捕捉率,さらには不安定化学種の検出能力において従来の二重電極よりも優れた性能を持つことが期待される。本年度は,(I)トラックエッチ膜フィルター電極の作製方法の確立,(II)フィルター電極を積層した二重電極の構築と機能評価,(III)二重電極を搭載した電気化学検出ユニットの開発とフロー分析系の構築について検討した。その結果,金属のスパッタリングによってフィルターの表面孔の入口付近まで金や白金がコーティングされたフィルター電極が容易に作成できること,提案する二重電極が捕捉率や作成の容易さ等の観点から有用な分析システムとなることが明らかとなり,さらにこれらの二重電極を搭載できるフロー電解セルの開発に成功した。これらの成果は,今後フロー型の高度分析システムを構築するための基礎となるものである。
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