本年度は、まず、キャピラリー電気泳動(CE)を用いてタンパク質-核酸複合体を分離・分取した後にPCR反応を行うCE-SELEXの検討を行った。細胞表面に存在する複数のマーカータンパク質とSELEXに用いるDNAプールのCE分離挙動条件の最適化を行い、タンパク質/DNA複合体の回収に成功した。回収したDNAを用いてPCR反応を行った結果、問題なくDNAが増幅されること、市販の磁性粒子を用いて一本鎖DNAが回収できる条件を確立した。この過程で、自らが調整したストレプトアビジン/ポリエチレングリコール(PEG)共固定表面をもつ磁性粒子を用いることにより、高効率に一本鎖DNAが回収できることを見出した。さらに、同磁性粒子は本来ストレプトアビジンが失活する高温領域においても有効に機能することを明らかとした(Polymer J.2011)。これは、共固定化したPEGがストレプトアビジンの熱変性を効率良く抑制し、ビオチン固定可能の失活を妨げたためであると考える。この他、ターゲットとなる細胞として、肝臓癌細胞HuH7、肺癌細胞a549、肺正常細胞OUS-11、間葉系幹細胞などの細胞の立ち上げを行い、各種細胞の単独および共培養条件を検討した。その結果、肺癌細胞a549の細胞塊は肺正常細胞OUS-11上で共培養した場合のみ、効率良く細胞塊を形成することが明らかとなった。コントロール実験の内皮細胞上の肺癌細胞a549や肺正常細胞OUS-11上の肝臓癌細胞HuH7は効率良い細胞塊形成が観測されなかった。本結果は、同じ種類の細胞同士の組み合わせが、細胞塊形成を促進させる場合があるという新たな細胞塊三次元培養の培養指針を示すものである。
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