本年度はDNAアプタマー固定化基板の作成を行い、その機能評価を行った。DNA固定化基板は、予めbiotin-BSAをポリスチレンシャーレ上に固定化した後、streptavidinを介して5'末端をbiotin修飾したDNAアプタマーを反応させることで作製した。固定化するDNAとして、がん細胞表面に発現するヌクレオリンとの高い結合能を有するアプタマー(AS1411)とチミンが70mer連続した配列を有するもの(T70)を選択し、作製した基板上に数種のがん細胞を播種して細胞の接着挙動を観察した。まず、培地に含まれる血清成分がDNAに与える影響を電気泳動により検討した結果、血清ありの培地中では6時間以上経つとAS1411アプタマーがほぼ分解されてしまうが、血清なしの培地中では分解されないということが分かった。この結果を踏まえ、DNA固定化基板上で細胞を培養する際は血清を加えない培地を用いることとした。さらにコントロールとしてRGDペプチド配列を末端に有するPEGを固定化した表面を作製した。その結果、DNAを固定化していない基板やT70固定化基板に比べてAS1411固定化基板でより多くの細胞の接着が確認できた。RGDペプチド配列固定化表面と比較して細胞接着能が低いことがあきらかとなったが、DNA固定化基板上に分子認識能を付与させると、効率良く細胞培養が可能であることを見出した。 また、細胞接着領域がマイクロレベルで規制されている機能性培養皿を用いてラット初代肝細胞の共培養系の構築・評価を行ったところ線維芽細胞との共培養系で肝機能が著しく上昇することを見出した。 今後は細胞接着後にヌクレアーゼを用いてアプタマーを分解することにより、細胞を非侵襲的に回収することを試みる。また今回は、各物質をポリスチレンシャーレ上にスポット状に滴下することで基板を作ったが、基板を作る容器を工夫することでスフェロイドや細胞シートなどの細胞構造体を回収できる可能性があるので、そちらも検討する予定である。
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