病原性の細菌、ウイルス、およびそれらが生産する毒素タンパク質のスクリーニング試験は、飲料水や食品の安全管理に資する重要な科学技術である。本研究では、簡便性・迅速性に優れたイオンチャンネルバイオセンサをマイクロ流体デバイスへ展開することで、ELISAを利用した既存デバイスの問題点を克服する新技術の開発に挑戦した。 検出部の開発では、毒素タンパク質としてコレラトキシン、ウイルスのシュミラントとしてのMS2、細菌として大腸菌を用い、イオンチャンネル能を示す抗体組織化膜を電極表面上に構築した。サイズの大きく異なる分析対象物質でも、特有の分子密度で抗体(lgG)を組織化することにより、同一の原理で検出可能であることを明らかにした。一方、分離部として、ピンチドフローフラクショネーションを利用したサイズ分離マイクロ流路を作製した。細菌(1μm~5μm)とタンパク質(<100nm)の分離を想定し、マイクロ流路内に1μm以下と1μm以上の二相の層流形成させるマイクロ流路をデザインし、レジスト製鋳型にポリジメチルシロキサン(PDMS)を流し込み、熱硬化させることで作成した。サイズ分離対象モデルとして、直径1μmと3μmの蛍光微粒子を調整し、蛍光顕微鏡を使って分離の最適条件を検討したところ、液層幅を1μmにすることにより1μm粒子の90%以上の回収率が得られた。さらに、1μmの抗体修飾磁性マイクロ粒子を調整し、大腸菌と反応させた後、マイクロ流路へ送液したところ、粒子に反応させた大腸菌濃度の増加に伴って、回収率の減少がみられた。本法は4時間の測定時間で5×10^2cfu/mLレベルの大腸菌の簡易分析が可能である.
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