研究概要 |
光学異性体のマイクロチップ電気泳動(MCE)-質量分析(MS)検出法の開発にあたり,有機ナノ結晶修飾MCEチップの作製を目指して,キラルセレクターとなるシンコナアルカロイド類ナノ結晶のチャネル内固定化について検討を行った。石英製チップのチャネルにカチオン性ポリマーを通液してからシンコニジンナノ結晶分散液を通液すると比較的安定な修飾層が得られ,アミノ酸の光学異性体分析において良好なキラル分離が達成された。そこで,作製したシンコニジンナノ結晶修飾石英チップをMCE-MS測定へ応用したところ,キラル分離した光学異性体由来のシグナルの検出に成功した。本法により,水に難溶性のためにこれまでMCE分析に適用が困難であったキラルセレクターをナノ結晶化することで,簡便な操作でのキラル固定相の作製が可能となり,キラルセレクターをナノ結晶化しても光学認識能が失われないことを示した点で画期的であり,今後,MCE-MS分析における新規キラル固定相としてのさらなる発展が期待される。 一方,酸化チタンナノ微粒子によるリン酸化ペプチドのオンライン濃縮法の開発においては,塩基性泳動液を満たしたキャピラリーに対し,TiO_2分散液を注入した後,β-casein由来リン酸化ペプチド試料溶液を長いプラグとして注入したところ,リン酸化ペプチドの鋭いピークが検出され,一般的なCE分析と比較すると,ピーク高さが20倍以上に増大していることが確認された。そこでMCE-MS分析に適用したところ,MS部の陰圧の影響を受け,TiO_2ゾーンおよび試料ゾーンがともに広がってしまうことが示唆された。陰圧の影響を排除しやすい長流路チップを適用することで,高感度かつ高性能なリン酸化ペプチド分析システムの構築が期待される。
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