農産物・考古学・宇宙・工業等において元素分析の迅速性・検出限界の改善が求められている。即発ガンマ線分析は非破壊、多元素同時、高精度などの特徴を持つ。その検出限界は多くの場合において試料中に含まれる水素からのガンマ線による妨害によって決められている。水素は同時に放出するガンマ線の数が1本(多重度が1)であるのに対し、殆どの元素の多重度は2以上である事に着目し、多重度の違いによって検出限界の改善を行なう。 本年度はこの多重度を求めるためのテスト用検出器を1台製作し、既存のデータ収集系とのタイミング調整等を行ない、基本性能確認のための測定を行った。テスト用検出器はシンチレーションファイバー、光電子増倍管、デバイダにより構成される。多重度測定用検出器はGe検出器(及びBGO検出器)と組み合わせて用いるが、Ge検出器が試料に近接して設置されており、更に遮蔽材が取り囲んでいるために多重度測定用検出器の設置スペースは非常に限られている。自在に変形するシンチレーションファイバーを用いた事により、複雑な形状の僅かなスペースに効率的に配置する事が可能となった。 測定には校正用線源のみを用いる予定であったが、校正用線源に加えてJ-PARC物質生命科学実験棟(MLF)においてパルス中性子を用いたテスト実験も行った。校正用線源を用いた測定により開発した検出器とデータ収集系のタイミング・ゲイン調整、シグナル・ノイズ比測定等を行った。測定したシグナル・ノイズ比は良好であった。J-PARC MLFにおけるテスト実験ではパルス中性子を用いた標準試料からの即発ガンマ線を測定し、検出器・データ収集系等が正常に動作する事を確認した。
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