研究概要 |
本申請研究では、資源少国の日本で世界の1/3を産出しているヨウ素に着目し、その有効利用の確立を大きな目的とし、デザイン型超原子価ヨウ素化合物を触媒に用いる環境低負荷型選択的酸化反応の開拓を行った。ヨウ素の遷移金属に似た酸化・還元機能に着目し、従来の毒性の高い重金属酸化剤や遷移金属触媒に代わる非金属系超原子価ヨウ素触媒による幾つかの高選択的環境調和型酸化反応に成功した。以下、代表的な成果を示す。 (1)1-ナフトール誘導体のエナンチオ選択的スピロラクトン化反応(北反応)に有効なキラル超原子価ヨウ素触媒を開発した。立体配座の柔軟性と分子内二次的相互作用をうまく活かした触媒設計で、高度な不斉誘起と基質適用範囲の拡大に成功した。最近、和光純薬工業株式会社は本触媒前駆体の試薬販売を開始した。 (2)安全で安価な過酸化水素水を共酸化剤に用いるヨウ素系触媒によるエナンチオ選択的酸化反応の開発に世界に先駆けて成功した。キラルスピロ型第4級アンモニウムヨージドを不斉触媒前駆体に、ケトフェノール類のエナンチオ選択的環状エーテル化反応により、有用性の非常に高い2,3-ジヒドロベンゾフランは高い化学及び不斉収率で得ることに成功した。本反応は、金属を全く使用せず、副生成物は水のみであり、室温、常圧下での穏和な条件で不斉収率が高く、高収率で目的の生成物を合成出来る等特徴があり、効率的で極めて環境に優しいといえる。
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