研究概要 |
光学活性環状エーテルは、生理活性天然化合物に基本骨格として広く存在する。エーテル結合のα位に様々な化学変換が可能なビニル基を有する環状アリルエーテルは、それらの合成にむけた重要中間体として注目される。ジオールを活性化する事なく脱水的に、求電子部や求核部の構造適用範囲も広く、高い収率かつエナンチオ選択性で環状エーテルへと変換できれば理想的な供給法として期待される。本研究では、独自に開発したアリルアルコール活性化触媒CpRu/2-キノリンカルボン酸混合錯体を足がかりに、これらを満足する新しい触媒的合成法の開発を目指した。標準反応として、(E)-ヘプテン-1,2-ジオールの2-ビニルテトラヒドロピランへの変換反応を取り上げて、2-ピリジンカルボン酸を基本骨格とした誘導化配位子を調製し、それらの触媒活性を調査した。その結果、反応場に近接するピリジン6位への置換基効果が大きく反応性に影響することがわかった。2-ピリジンカルボン酸や2-キノリンカルボン酸系で反応をおこなうと、標準条件下30分以内に定量的に反応は進行するのに対し、立体要請度の高い6-tert-ブチルピリジンカルボン酸や8-メチルキノリンカルボン酸を用いると、反応は全く進行しない。これら予備的情報のもと、エナンチオ選択性獲得にむけて光学活性配位子ライブラリを構築した。予備的結果ではあるが、6位に2-クロロナフチル基をもつ5-メチル-2-ピリジンカルボン酸系触媒が高い選択性を示すことを確認している。最大でエナンチオマー比99:1以上のアルケニルエーテルが定量的に得られる。
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