キラル環状工一テルを部分骨格とする有機化合物は自然界に広く存在し、様々な生物活性を示す。これらの合成において、光学活性α一アルケニル環状工一テル類は柔軟な官能基変換特性から重要合成中間体の一つとして広く認められている。その不斉合成に対する注目度は高く、とくに原子効率や操作性の観点から、触媒法の開拓が求められている。ω一ヒドロキシ基とプロキラルなアルケニル関連基とのエナンチオ面選択的分子内環化のアプローチがいくつか報告されているが、過剰量の酸化剤や添加剤の必要性、共生成物の発生、低反応性、低基質汎用性、基質合成の煩雑性等、の問題があり、未だ改良の余地は大きい。本研究では、新しくω一ヒドロキシアリルアルコール類の脱水的不斉環化に注目した。触媒以外の添加剤を加えることなく、ジオール類を無保護で直接的に光学活性α一アルケニル環状工一テルへ変換できれば、理想的な合成手法となろう。共生成物は水のみである。独自に開発した脱水的アリルエーテル合成触媒CpRu/2一ピリジンカルボン酸を起点に調査した配位子構造/活性・選択性相関の結果を基に、Cl-Naph-PyCOOHおよびそのアリルエステルを設計・合成した。これをCpRuと組み合わせると、ω一ヒドロキシアリルアルコール類を定量的かつθxo一画g選択的に目的とする環状工一テルへと変換できる。様々な置換様式のアリルアルコール基質を用いることができ、四置換炭素中心を立体制御することもできる。ω一ヒドロキシ部には一級、二級、三級アルコールからフェノールまで適用できる。エナンチオ選択性は最大> 99 : 1に及ぶ。反応性、選択性、基質汎用性のいずれの観点からも従来法に優る。有用物質合成への今後の展開が期待される。
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