研究概要 |
光学活性化合物の効率的合成法の確立は、21世紀のライフサイエンスを向上させる点から最重要課題である。しかしながら,現況の不斉合成技術において高効率的といえる技術は限られている。そこで,前年度に引き続き、不斉触媒にこれまでに申請者が開発してきたヘテロアリールスルホニル基を組み込むことにより,多機能性不斉触媒の開発を検討した。前年度に開発した不斉触媒を用い、幾つかの不斉反応を開発すると共に、新しくヘテロアリールスルホニル基をキナアルカロイド触媒に導入した不斉有機触媒を設計・合成した。この触媒を用い、これまでに高い不斉収率を与える報告例のないケトン類への脱炭酸アルドール反応、マンニッヒ反応を検討したところ、高収率・高エナンチオ選択的に反応が進行することが明らかとなった。両反応とも、世界ではじめて高エナンチオ選択性を与える例であった。また、この手法を用いて生理活性物質であるFlustraminol BやAG-041Rの不斉合成に成功した。さらに、実験計画に記述した三成分連結型のαアミノリン酸合成反応の開発にも成功し、水中での不斉合成にも成功した。また、分子軌道計算、X線結晶構造解析を用いることにより、ヘテロアレーンスルホニル基と分子内のアミド基が水素結合して、高度な不斉反応場を構築していることが明らかとなった。このように、研究実施計画にあった環境調和型合成反応の開発においても、一定レベルの成果が上げられたといえる。
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