研究概要 |
本年度は研究実施計画の通り,アルキン屈曲型多座配位子の高効率合成と多様な外的刺激応答性を示す発光性錯体への応用を目指して研究を行った.結果として炭素-水素結合の直接ハロゲン化を経由する方法については現在検討中であるが,代替法としてジアリールアセチレンのオルト位を直接リチオ化するという方法を用いることで種々のアルキン屈曲型三座配位子を短段階で簡便に合成することに成功した.その中でもリンを配位部位とする配位子を用いた場合,そのロジウム一価錯体が期待した通りアルキンが直線から屈曲した構造であることをX線結晶構造解析により確認した.通常d8金属のアルキン錯体ではアルキンは配位平面に直交する形で配位することが知られているが,今回合成したアルキン錯体は,アルキンがキレート配位により強制的に配位平面上に位置している特異な錯体であると言える.また,このアルキン錯体を溶液中で加温することによりアルキン部分で二量化し,二核シクロブタジエン錯体となることも見いだした.このシクロブタジエン錯体は二つの炭素-炭素二重結合がともにロジウムにη2-配位した特異な配位様式をもっている.なお,これらの結果はこれまでにない非常に新規性の高いものであったため,まとめて日本化学会第91春季年会にて口頭発表した. また,アルキン屈曲型錯体の光物性についても一定の知見を得た.前述のアルキン屈曲型三座配位子を白金二価錯体として紫外可視吸収スペクトルを測定したところ,配位の前後で明確な吸収波長の変化が認められた.
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